地下アイドルの就職は不利? ― 採用する側が実際に見ているところ

「地下アイドルだったと言ったら、落とされるんじゃないか」
「無名のまま終わったから、書けることが何もない」
就職を考えはじめたとき、ここで足が止まってしまう方はとても多いです。ただ、採用する側が見ているのは、活動の知名度でも規模でもありません。その数年で何をやってきたか、それだけです。
本記事では、活動している方自身がこの言葉で調べることも多いため、「地下アイドル」という語をあえて使用しています。
地下アイドルの就職は、不利になりますか?
「不利かどうか」で言えば、地下アイドルだったこと自体が落ちる理由になった例を、私は見たことがありません。つまずきが起きるのは、経験がまだ伝わる形になっていないときです。
「印象が悪いのでは」「お堅い業種はやめたほうがいい」と言われることもあります。読むと不安になる気持ちも分かります。ただ、私が採用の現場で見てきたことは、少し違います。企業とやりとりをしていて多いのは、何をしてきた人なのかが読み取れないまま、書類の段階で終わってしまうことです。

三つのうち、実際に落ちているのは最初の二つだけです。しかもどちらも、書き方と話し方の問題です。つまり不利は入口にしかなくて、入口は整えられます。
その入口で、知名度は関係あるのか。
知名度がないと、不利になりますか?
企業から求人をいただくとき、「有名だった人が欲しい」と言われたことは一度もありません。動員が何人だったか、テレビに出たことがあるかを聞かれることも、まずありません。
規模が小さい現場なら、集客からSNSの更新、物販の管理まで、自分でやってきた方が多いです。大きなグループにいたなら、チームの中での動き方や、水準の高い現場を経験しています。どちらにも、話せる材料はちゃんとあります。
私も、卒業するとき、自分の仕事にどれくらいの値打ちがあるのか見当もつきませんでした。教えてくれる人も、比べる相手もいなかったからです。「無名だったから何もない」と思ってしまう気持ちは、よく分かります。でもそれは力がなかったからではなく、測る物差しをまだ持っていなかっただけでした。
では、企業は知名度の代わりに何を見ているのか。
採用する側は、実際にどこを見ているのでしょうか
面接対策をしていると、企業から聞かれることは驚くほど似ています。どれくらい続けたのか。お客さまとどう接していたのか。そして、どういう思いでやってきたのか。

面接で本当に見られているのは、みっつめだと思います。なぜ始めて、何がつらくて、それでもなぜ続けたのか。立派な答えである必要はなくて、自分の言葉で話せるかどうかです。
足すのではなく、言い直すだけです。履歴書に書ける形にするのは、それからで間に合います。
以前、「自分は事務くらいしかできない」と思い込んでいた方がいました。面談の場で企業の採用担当者が言ったのは、「人と話せるのは、すごく武器なんですよ」という一言です。本人にとっては、そのとき初めて言われた言葉でした。その方はいま、医療機器メーカーで営業をしています。
それでも、ネットで言われていることのほうが強く残っている方も多いと思います。
ネットでよく言われる3つは、本当ですか?
三つとも、実際に見てきたことと、うまく重なりません。

「避けたほうがいい」と言われがちな医療機器メーカーや広告代理店に、実際には進んだ方がいます。隠すほうは逆で、職歴の空白を説明できなくなるぶん、かえって不利になります。
もちろん、どんな会社にも合う合わないはあります。ただ、それは誰にでもあることです。最初から選択肢を狭めておく理由はない、というのが実際に見てきた感覚です。
では、その先はどこに行き着いているのか。
活動を終えた人は、実際にどんな会社に入っているのでしょうか
答えは、拍子抜けするほど普通です。事務、受付、接客、営業。そこから広報や人事、企画へ進んだ方もいます。

図の6人は、全員が有名なグループにいたわけではありません。「社会人経験なんてない」と自信をなくしていた方は、いまIT企業で新規事業の立ち上げを任されていて、収入も活動していた頃とほとんど変わりませんでした。「アイドルは正社員になれない」と思い込んでいた方は、広告代理店の総務で、土日休みで働いています。最初から「これがやりたい」と決めていた方は、ほとんどいません。
ひとりで就活を進めるのが不安なときは

面談で経験を聞くと、最初は「何もしてこなかったんです」と返ってくることがよくあります。近すぎると、自分では見えなくなるものだと思います。
だから、外から見てくれる相手を一人つくるところからで十分です。相手は友人でも家族でも構いません。
よくある質問
地下アイドルだったことは、履歴書に書かないほうがいいですか?
書いたほうが安全です。職歴の空白は面接で理由を聞かれることが多く、そこで言葉に詰まるほうが印象に残ってしまいます。グループ名や活動名を書く義務はないので、「芸能活動(アイドル)に従事」と記載したうえで、担っていた業務を添えれば十分です。
何年も一般企業で働いていませんが、正社員になれますか?
なれます。相談に来られる方の多くは、一般企業での就職経験がない状態から始めています。企業側もそれを前提に見ているので、経験の有無より「これから何をしてくれそうか」が伝わるかどうかで分かれます。
地下アイドルを辞めた後、大企業に入ることはできますか?
入った方もいます。ただ、新卒枠は年齢で対象から外れることが多く、中途採用では実務経験を見られることが多いです。いきなり大手だけに絞ると時間がかかりやすいので、まず働く足場をつくって、そこで実務を積んでから移る方もいます。順番の問題だと思います。
就職に有利な資格を、先に取ったほうがいいですか?
必ずしも必要ありません。簿記や医療事務のように働きながら学べるものもありますが、「取ること」が目的になって、出口が描けないまま時間が過ぎてしまう例をよく見ます。何の入り口として取るのかを決めてからのほうが、遠回りになりません。
最後に
「地下アイドルだったから不利なのでは」と感じているとき、たいてい、あの数年のことはまだ誰にも話せていないだけなのだと思います。名前が知られていなくても、規模が小さくても、その数年でやってきたことは確かにあります。
ひとりで「私には何もない」と抱え込む必要はありません。まずは言葉にするところから、一緒に始めていけたら嬉しいです。

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監修・執筆
桜のどか(さくら のどか)
株式会社ツギステ取締役/元アイドル(9年)/キャリアコンサルタント(国家資格)
アイドルとして約9年活動し、卒業。俳優としての活動を経て、現在は元アイドルの就職・転職サポートを担当しています。わたし自身、ステージを降りたあと、この先のキャリアのことでずいぶん迷いました。だから、あのときもっと早く知っていればと思ったことを、いま迷っている方に伝えるために書いています。
note: https://note.com/sakuranodoka X: https://x.com/sakura_nodoka_
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