未練があるまま辞めていい? ― 「やりきれなかった」の整理のしかた

「もう少しやれたんじゃないか」
「やりきれなかった気がして、次に進む気になれない」
卒業や引退を考えるとき、あるいは辞めたあとになってから、この気持ちが残る方はとても多いです。私自身もそうでした。まわりからは「区切りがついてよかったね」と言われるのに、自分の中ではまだ何かが終わっていない感じがする。この記事では、未練が残ったまま辞めてしまっていいのか、「やりきれなかった」という気持ちをどう整理すればいいのかを、順を追ってまとめます。書いているのは、約9年アイドルとして活動して卒業し、いまは同じ道を歩む方のキャリアを支援している私、桜のどかです。
未練が残っているのに、辞めてしまっていいのでしょうか
辞めていいかどうかよりも、「自分で決めた」と思えるかどうかのほうが、あとになって効いてきます。未練があること自体は、辞めない理由にも、辞めていい理由にもなりません。
よくあるのが、「気持ちに整理がついてから辞めよう」と考えて、そのまま何年も過ぎてしまうケースです。でも、未練がきれいに消えてから辞められる方は、ほとんどいません。区切りをつけるというのは、気持ちをゼロにすることではなく、「ここまではやった」「その先は自分で選ばなかった」と、自分の言葉で言えるようになることだと私は思っています。
だから、いま未練があるからといって、決めてはいけないわけではありません。逆に、未練がないふりをして急いで決める必要もありません。大事なのは、その決め方を人任せにしないことです。
どうして「やりきれなかった」と感じてしまうのでしょうか
活動そのものに、「ここまでやれば終わり」という線が、もともと引かれていないからです。
学校なら卒業式があり、仕事にも区切りの形があります。けれど表現の世界は、どこまで行けば達成なのかを、誰も決めてくれません。上を見ればいくらでも上がありますし、続けているかぎり可能性は残り続けます。むしろ「その場に居続けること自体が、いちばん可能性が高い」と感じられる構造になっています。だから、どのタイミングで離れても「まだやれたかもしれない」が残りやすいのです。
これは、あなたの頑張りが足りなかったからでも、まわりの誰かが悪かったからでもありません。ゴールの線が引かれていない場所を全力で走っていれば、誰でもそうなります。実際に、長く一つの場所で活動しきった方でも、「やりきった」と言い切れる方は多くありません。
私自身、活動していたころは、自分で何かを決めるという経験があまりありませんでした。何かを発信するにも確認を通してからでしたし、こうしたいと思ったことが、そのまま形になることばかりではありませんでした。守ってもらっていた面も確かにあるので、それが悪かったとは思っていません。ただ、卒業を決めたときに「これでよかったのかな」とずっと考えてしまったのは、自分で決めるということに慣れていなかったからだと、いまはそう思います。

未練を抱えたまま次に進むと、どうなりますか
気持ちの整理がつかないまま、まわりに合わせて次を決めてしまうと、しばらくしてから足が止まりやすいと言われています。
引退したアスリートを対象にした研究では、次の仕事へうまく移れた場合であっても、その移行を「自分で意思決定できたかどうか」が重要だと指摘されています。自分で決めたと言えない形で移ってしまうと、その先の人生の節目で、あらためてつまずきやすくなるというのです。
これは、現場で相談を受けていても本当にそう感じます。履歴書の書き方や面接の練習といったことの前に、この「やりきれなさ」のところで止まっている方は、少なくありません。ここを飛ばしたまま就職活動だけ進めても、途中で「なんだか違う気がする」と手が止まってしまうことがあります。
だからこの気持ちは、無理に忘れようとしなくて大丈夫です。忘れるのではなく、いちど言葉にして仕分けてしまうほうが、結局は早く進めます。
「やりきれなかった」気持ちは、どう整理すればいいですか
消そうとするのではなく、3つに仕分けます。①いまからでも回収できること ②時間や環境の側の事情で、もう終わったこと ③そもそも自分の力の外にあったこと、の3つです。

やり方はかんたんです。紙でもスマホのメモでもいいので、「やりきれなかったこと」を思いつくまま書き出します。そのあと、一つずつ①②③のどれかに印をつけていきます。書きながら分けようとすると手が止まるので、先に全部出してから分けてください。
- ①いまからでも回収できること:歌やダンスを続けたかった、発信を続けたかった、あの場所にもう一度行きたかった。この列に入るものは、実は活動を離れても続けられるものが多いです。形を変えれば、いまからでもできます。
- ②時間や環境の側の事情で終わったこと:グループの活動が終わった、体調を崩した、生活が続けられなくなった。悔しさは残りますが、これはあなたの落ち度ではありません。
- ③自分の力の外にあったこと:世の中の流れ、タイミング、他の人の判断。ここは手放して大丈夫な列です。
実際に書き出してみると、多くは②と③に入ります。「自分が足りなかったから終わった」と思い込んでいたことの大半が、時間や環境の側の話だった、と気づく方はとても多いです。そして①に残ったものは、いまの生活の中で少しずつ拾い直していけます。仕事にするかどうかは、そのあとで決めれば十分です。
続けるか離れるかで迷っている段階の方は、気持ちを書き出すところから始められる無料のノートも用意しています。
「自分で決めた」と思えるようになるには、どうすればいいですか
決める練習を、小さいところから積み直します。自分で決める力は、生まれつきの性格ではありません。筋トレと同じで、使っていないと鈍っていきます。
活動している間は、投稿の内容から見せ方まで、確認を通してから動く場面が多くなります。それは守るための仕組みでもあるので、一概に悪いとは思いません。ただ結果として、「自分で決めて、その結果を引き受ける」という経験を積みにくい環境ではあります。そこから急に、これからの人生という大きな決定を迫られるのですから、怖くて当たり前です。決められない自分を責める必要はありません。

練習は、本当に小さなことからで大丈夫です。今週の予定を一つ、自分の希望だけで決めてみる。気が進まない誘いを一度だけ断ってみる。なんとなく続けているものを一つやめてみる。この程度で十分です。小さく決めて、その結果を自分で受け取る。それを何回か繰り返すと、大きな決定のときにも「自分で決めた」という感覚が戻ってきます。
卒業したあと、何もやる気が出なくて動けないという時期に入る方も多くいます。その状態については、別の記事でくわしく書いています。
未練が残っていることを、面接で話しても大丈夫ですか
大丈夫です。むしろ、「なぜ辞めたのか」を自分の言葉で説明できることのほうが、ずっと大事です。
企業の方が気にしているのは、未練があるかどうかではありません。「またすぐ戻ってしまうのではないか」「気持ちが決まっていないのではないか」という点です。ですから、未練を隠そうとするより、どう区切りをつけたのかをセットで話すほうが、はるかに伝わります。

たとえば、こんな言い換えができます。
- 「やりきれなかったので辞めました」 → 「◯年間続けて、自分としてはここまでやったと思えるところまで来ました。その先を続けるかどうかは自分で決めて、次は長く積み上げられる場所で働きたいと考えています」
- 「本当は続けたかったんですけど」 → 「続ける道も考えたうえで、まず生活の土台をつくると決めました」
- 「特に理由はなくて、タイミングで」 → 「グループの活動が終わったことをきっかけに、これからの働き方をあらためて考え直しました」
嘘をつくわけでも、気持ちを偽るわけでもありません。事実の並べ方を変えているだけです。面接での伝え方は、こちらの記事にまとめています。
面接でアイドル経験をどう話す?受かる伝え方とNG例(関連記事)
もし、また戻りたくなったらどうすればいいですか
戻ってもいいです。就職は、表現の道を閉じる手続きではありません。
以前、業務委託の仕事を探したいというご相談をいただいた方がいました。そのときはご希望に合う形が見つからず、いったんお別れになりました。それから約1年後、生活が変わったことをきっかけに「今度は正社員で働きたい」と、もう一度ご連絡をくださいました。一度離れていたあいだの時間が、その方にとっては整理の時間になっていたのだと思います。
一度相談して決まらなかった方の再相談も、もちろん歓迎です。離れたあとに戻ってくる方も、働きながら活動を続ける方もいます。どちらかを選ばないといけない、という決まりはありません。

ブランクがあってからもう一度働き出すことについては、別の記事にまとめています。
相談するとどうなるのでしょうか
まず、いまの状況とお気持ちを伺うところから始めます。辞めると決まっていなくても、未練が残ったままでも大丈夫です。

- カウンセリング ― いまの状況とお気持ちを伺います(辞めると決めていなくても、現役でもOK)
- 強みの翻訳 ― 適性検査と対話で、これまでの経験を仕事の言葉に置き換えます
- 書類作成のサポート ― 履歴書・プロフィール表・職務経歴書を一緒に整えます
- 面接のサポート ― 面接練習と対策を一緒に進めます
- 就職後も ― 送り出して終わりにはしません。定着まで伴走します
費用は最初から最後まで無料です(企業側から紹介料をいただく仕組みのため。有料職業紹介 許可番号 13-ユ-315539)。これまでに相談者は100名以上、連携企業ネットワークは200社以上に広がり、面接に進んだ方の内定率は80%を超えています。
決める前の段階でのご相談が、いちばん役に立ちます。「辞めるかどうか」の答えをこちらから出すことはありません。決めるのは、いつでもご本人です。実際にどんな道へ進んだ方がいるのかは、先輩たちのインタビューが参考になります。
辞めどきそのもので迷っている段階の方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。
最後に
未練があるまま辞めるのは、失敗ではありません。線が引かれていない場所を走ってきたのだから、どこで降りても何かは残ります。大事なのは、その残ったものを持ったまま「自分で決めた」と言えるところまで、気持ちを整理しておくことだと思っています。
ひとりで仕分けるのが難しければ、書き出したものを持ってきていただいても、まっさらな状態で来ていただいても大丈夫です。一緒に整理していけたら嬉しいです。
→ 決めきれないままで大丈夫です。まずは話すところから(無料相談)

監修・執筆
桜のどか(さくら のどか)
株式会社ツギステ取締役/国家資格キャリアコンサルタント/元アイドル(9年)
アイドルとして約9年活動し、卒業。俳優としての活動を経て、現在は元アイドルの就職・転職サポートを担当しています。わたし自身、ステージを降りたあとに同じことで迷いました。だからこの記事は、正論ではなく「その時ほしかった言葉」で書いています。
note: https://note.com/sakuranodoka X: https://x.com/sakura_nodoka_
株式会社ツギステ
アイドル・表現者経験者に特化した就職・転職支援サービスを運営しています(有料職業紹介事業 許可番号 13-ユ-315539/設立 2023年1月)。相談から書類作成・面接対策・入社後のフォローまで、求職者の方は無料で利用できます。
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